最近では、社会人の方でも、転職や大学院への編入のために、IELTSを受験する方が多くなってきています。
一方で、仕事や家事などで学習する時間を確保することが難しい、と感じている方も少なくありません。
この記事では、忙しい日々の中でIELTS対策を行うための方法を紹介していきます。
働きながらの効果的なIELTS対策
IELTSの学習を行う上で重要なことは、毎日コツコツ、時間をかけて学習を積み重ねることです。
特に、社会人の方に意識してもらいたいポイントは、次の3つです。
- 英語に触れる機会を増やす
- 文法をおさらいする
- 語彙力を増やす
また、着実にステップアップするためにも、モチベーションの維持が非常に大切です。
学習を始める前に、IELTSを受験する目的、目標スコア、目標までの期間と計画を明確にしましょう。

参考として、MBA進学や大学院の編入目的での受験が多く、アカデミックで6.5~7.0、ジェネラルで6.0~7.0を目指す方が多いです。
IELTS対策の3つのステップ
IELTS対策を行う上で、効果的なステップは次の通りです。
- 今の自分のレベルを見極める
- 勉強計画を立てる
- 英語の基礎能力を強化する
社会人になり、英語を使う機会が少なくなったという方も多いため、まずは基礎を固め直すことが大切です。
① 今の自分のレベルを見極める
まずは、自分の現状のレベルを見極めることから始めましょう。
実力を過信せず明確にすることで、自分に適した目標や学習プランの設定ができるようになります。
現在のレベルは、IELTSの模擬テストや、プログレスチェック等で判定できます。
レベルチェックを行った後は、さらに理解度を明確にするために次の項目も確認しましょう。
- リーディングをやってみて語彙力不足を感じたか
- リーディング問題で文法の説明や構文の解析ができるか
- リスニングの大半を聞き取ることができたか
- スピーキングの質問に詰まることなく解答できたか
- ライティングで文法のミスなく意見を書けたか
② 勉強計画を立てる
現在のレベルが把握できたら、目標スコアに向けた学習プランを考えていきましょう。
また、目標までの期間も現在のレベルによって変わるので、無理のない計画を立てることが大切です。
現状のレベル:4.5~5.0
目標スコア:6.5~7.0
目標までの期間:基礎のおさらいが必要なので、最低でも1年間。ジェネラルも共通。
学習プラン:1日1時間を目安に、集中して毎日学習する。土日など、時間が取れる日は長く時間を取る。
現状のレベル:5.5
目標スコア:6.5
目標までの期間:1年間
学習プラン:学習時間は1日2時間
~3ヶ月:英語基礎能力の強化
4~8ヶ月:リスニングと語彙の強化、各技能の予習・復習
9~12ヶ月:事前受験、足りない技能の集中対策



勉強時間が1日4時間以上になると、集中力が低下し効率が下がります。短い時間でも、集中、継続して学習することで効果が出ます。
③ 英語の基礎能力を強化する
英語から離れた期間が長い方、英語に自信のない方、現在のレベルが4.5~5.5の方は、基礎に専念しましょう。
基礎と言っても、次の項目は英語の根幹にもなる部分なので、非常に大切です。
- 文法のおさらい
- 単語数を増やす・語彙力強化
- 読解力を養う
- リスニング力を強化する
基礎力が十分に高い方であれば、スコア6.0は簡単に取得できます。
まずは焦らず基礎を固め、十分に力を付けてからIELTSの過去問や模擬演習を行いましょう。



スコア6.0以上を目指す場合は、基礎の上にさらに知識を積み重ねていく必要があります。
英語力の土台となる基礎力をしっかりと固め、効率的にスコアを伸ばしていきましょう。
以下の記事では、IELTSの試験と基礎分野の学習方法について、より詳しく紹介しているので、参考にしてください。


基礎英語力のある方
英語の勉強は継続しており、文法などの基礎がある程度しっかり固まっている方は、試験対策から始めましょう。
過去問題などを解くことで、試験の傾向と問題形式を学びつつ、同時に英語力を養うことができます。
学習を行う際は、解いて終わりではなく必ず復習を行うことで、読解力の向上にもつながります。
IELTSセクション別対策
IELTSには、リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの4つの技能があります。
ここでは、それぞれの技能の概要と対策方法について紹介していきます。
社会人のためのリーディング対策
リーディング試験は、次の要件で出題されます。
- 学術的な3つの長文が出題される
- 設問数は全40問
- 制限時間は60分
- 難易度は次の通り
パッセージ1:最も易しい
パッセージ2、パッセージ3:同程度
パッセージ2かパッセージ3のどちらかが最も難易度が高い
単純に配分すると1パッセージあたり20分ですが、パッセージごとに難易度が異なるので、調整が必要です。
時間との戦いとも言われる試験なので、素早く解答を見つける力が必要とされます。
リーディング試験では、出題される設問の形式が決まっています(True/False/Not given問題など)。
予め設問に慣れておくことで、問題文を読む手間を省き、時間を節約しましょう。
リーディングの学習法
リーディング学習では、次のような学習方法がおすすめです。
- 本文をスキャニングする
- 速読力を付ける
- 模擬テストを解く
- 復習する
1. 本文をスキャニングする
スキャニングとは、いわゆる「ざっと読み」のことを指します。
大まかに本文の内容を把握した後に設問を解くことで、時間を短縮しつつ適切な解答を導くことができます。
2. 速読力を付ける
速読力とは、その名の通り素早く文章を読む力のことを指します。
速読力は、丁寧に読む「精読」と、何度も繰り返し読む「多読」を繰り返すことで鍛えていくことができます。
まずはネット上の英文記事などを読み、大まかに内容を把握できるように練習しましょう。
速読を行うコツは次の通りです。
- 知らない単語にとらわれない
- 展開や作者の意見を想像しながら読む
- わからない表現は飛ばして読む
- 声を出さずに黙読する
速読を行う際に、本文中のキーワードに印をつけることも、時間の短縮につながります。
特に、人名、会社名、国名、年代・年などの固有名詞は重要な単語になる可能性が高いので、注目しましょう。
3. 模擬テストを解く
目標とする試験を受ける前に、必ず模擬テストなどを受けるようにしましょう。
時間通りに解くことで、実際の試験の感覚が身に付くだけでなく、現在の到達レベルも明確にできます。
模擬テストで判明した実力を参考に、学習プランや受験時期の調整も行いましょう。
4. 復習する
演習問題などを解いた後は、必ず復習をして解答を振り返るように心がけましょう。
復習は、読解力の向上にもつながるので、以下のポイントに意識して丁寧に行うことが大切です。
- しっかりと精読する
- 知らない単語や表現は覚える
- 文章の構造を理解する
- 必要なら文法をおさらいする
読解力を養いながら試験対策をすることで、効果的にスコアアップが目指すことができます。



リーディングで高得点を取ることで、アウトプットが必要なライティングやスピーキングの点数をカバーできるので有利です。
社会人のためのリスニング対策
リスニング試験は、次の要件で出題されます。
- 設問数は全40問
- 4つのセクションに分かれている
- セクションが進むにつれて難しくなる
- 出題内容は次の通り
セクション1:日常的な会話形式
セクション2:スピーチもしくはプレゼンなどのモノローグ
セクション3:教育関係についての対談等の会話形式
セクション4:講義などの学問に関するトピックについてのモノローグ



セクション1など、簡単な問題は全問正解を目指しましょう。また、リスニングでは、とにかく問題文を先読みすることが重要になります。
リスニングの学習法
リーディング学習では、次のような学習方法がおすすめです。
- シャドーイング、ディクテーション、リテンションを行う
- 語彙力を伸ばす
- 英語に聞き慣れる
1. シャドーイング、ディクテーション、リテンションを行う
TED TALKS、BBCのポッドキャストなど、スクリプト付きのオーディオを用いて、次の演習を取り入れましょう。
- ディクテーション:音声を聞き取り紙に書き出す
- シャドーイング:音声に続いて発音する
- リテンション:文章をある程度のかたまりで切って反復する
これらの演習は、リスニング力の向上に特に効果的なので、最低でも1日1回は聞くことをおすすめします。
音声を聞いた後は、内容が正しいかどうか、スクリプトを確認して振り返りましょう。



ディクテーションとリテンションの練習を重ね、3か月でスコアが6.0から7.5まで伸びた方もいらっしゃいます。
2. 語彙力を伸ばす
IELTSのリスニング試験の音声は、それほど速いわけではなく、むしろゆっくり流れます。
しかし、単語や表現がわかっていないと、内容がわからなくなってしまうので、語彙力の強化は必須です。
3. 英語に聞き慣れる
公式問題集や模擬問題に取り組む際は、まずは音声を止めずに時間内に解答しましょう。
その後、すぐに答え合わせするのではなく、解答がわかるまで何度も繰り返し音声を清聴しましょう。
始めは何を言っているかわからなくても、徐々に耳が英語に慣れ、音声を聞き取れるようになっていきます。



地道に音声とスクリプトを比べ、英語の発音とつながりが把握できるように練習を重ねましょう。
社会人のためのスピーキング対策
リスニング試験は、次の要件で出題されます。
- IELTS試験官と1:1の対面形式面接
- 時間は14分
- 3つのパートに分かれている
- 出題内容は次の通り
パート1:日常的な話題(仕事、友達、家族等)
パート2:トピックカード(キューカード)に沿ったスピーチ
パート3:パート2に関連したディスカッション
スピーキングの採点
実は、IELTSのスピーキングは採点基準が最も低く、点数が取りやすいセクションと言われています。
多少の文法ミスがあっても、しっかり文章でアウトプットできれば、ある程度のスコアを獲得できます。
解答のポイントは次の通りです。
- 英語力を試験官にしっかりと見せる
- 答えを話すだけではなく、根拠も伝える
- 内容を自発的に広げる
- パート1では5文ぐらいの長さで話す
- パート2は2分間ギリギリまで話す
- パート3はフルアンサーで5文以上話す
スピーキングの学習法
IELTSスピーキングで得点を取るためには、とにかくアウトプットが大切です。
英会話スクールや自宅などで、ひたすら英語を話す練習をし、自分の意見を伝えられるようにしましょう。
特に、頻出トピックである「Hobbies」や「Movies」などは必ず網羅しておきましょう。



スピーキングでは、文法のミスよりも流暢に話せるかが重視されます。スラスラと言葉が出るように練習しましょう。
社会人のためのライティング対策
リスニング試験は、次の要件で出題されます。
- タスク1とタスク2で構成されている
- 時間は60分
- 配点は、タスク2がタスク1の倍
- 時間配分と文字数は次の通り
タスク1:20分、150文字以上のレポート
タスク2:40分、250文字以上のエッセイ - 出題内容は次の通り
タスク1:図や表の説明、地図問題、プロセスマップの3種類
タスク2:アカデミックエッセイ
IELTSの中でも、ライティングの採点基準が最も厳しいと言われています。
しかし、決してスコア6.0を取るのが難しいというわけではないので、丁寧に文章を作成しましょう。



文法ミスがなく、しっかりとした構成のもとに書かれていれば、6.0のスコアは十分に目指せます。
ライティングの学習法
ライティング学習では、次のような学習方法がおすすめです。
- 解答サンプルと見比べる
- 自分のエッセイとサンプルを比較する
- 使える表現を覚える
- 何度も書き直す
1. 解答サンプルを見る
文章を書く前に、IELTSライティングの解答サンプルに目を通してみましょう。
サンプルを見ることで、解答で用いるテンプレートや構造を把握し、自分のエッセイに取り入れることができます。
参考にするサンプルが偏らないように、1つや2つではなく、たくさん目を通すことがおすすめです。
2. 自分のエッセイとサンプルを比較する
大体の構成が把握できたら、自分でエッセイを書いてみて、それをサンプルと比較してみましょう。
サンプルと比較することで、自分とは異なる意見や一般的な知識を学ぶことができ、視野が広がります。
サンプルがない問題は、ニュース記事や文献などを参考に、一般知識や表現方法、トピック関連用語を学びましょう。
サンプルによっては、内容が的確でなかったり、構成が望ましくないものも存在します。
参考にする解答サンプルは、信頼できるものかどうかを必ず確認しましょう。
3. 使える表現を覚える
サンプルで使われている構成や表現を「真似ること」で、文章を書く力が鍛えられます。
使える表現やわからない単語があれば、ノートなどに書き出しておくことで、自分のものにしていきましょう。
4. 何度も書き直す
ライティング力を向上させるためには、とにかくエッセイを書くことが大切です。
まずは時間をかけながら文章を作成し、慣れてきたら時間を測るなど、徐々にステップアップしましょう。



エッセイを書いた後は、必ず他の文献を参考にして改善点を見つけましょう。何度も書くことで、より良い文章が作れるようになります。
IELTSライティングの問題形式については、次の記事でより詳しく紹介しているので参考にしてください。


まとめ
社会人になると、仕事や家事が忙しく、勉強時間を確保することが難しくなります。まずは自分のレベルを知り、目標に合わせて適切な計画を練りましょう。 計画が順調に進んでいないときは、軌道修正が必要です。学習時間を確保するために無理なスケジュールにしていないか、目標が高くないかなど、定期的に見直しを行いましょう。IELTSでは、学習を継続できるような工夫が大切です。
独学が難しいと思う方は、スクールの利用もおすすめです。勉強をしなければならない状況が自然とできるので、学習習慣の定着やモチベーションの維持が期待できます。
忙しい社会人の方に選ばれる